働き方改革で変わる8つのこと|働き方改革の課題とお手本となる事例3選

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更新日:/公開日:2022年06月26日

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働き方改革で変わる8つのこと

溝口弘貴
この記事の企画・編集者
溝口弘貴
つなぐマーケティング代表

※このページには【PR】が含まれています。

近年、「働き方改革」という言葉を耳にする機会が増えてきました。

働き方改革とは、「一億総活躍社会の実現」を掲げる政府の方針によって進められている政策のひとつで、一人あたりの生産性向上や、労働環境の改善、働き方の多様化を目的とし、2019年4月より働き方改革関連法案の一部が施行されました。

長時間労働や低賃金等の是正、ハラスメントの防止、非正規社員の待遇見直しなど、よい部分ばかり取り上げられています。

しかし、具体的に私たちの会社や生活がどのように変わるのか、いまいち分からず疑問や不安をもっている方も多いのではないでしょうか。

溝口
溝口

働き方改革という言葉の響きはいいですが、本当に企業や労働者にとってよい制度なのか、どれぐらい企業に浸透しているのかなどよくわからないですよね。

本記事ではなぜ働き方改革をするのか、働き方改革によってどんな変化があるか、企業の事例なども紹介します。

   
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この記事の監修者

溝口弘貴

溝口弘貴

フリーランスガイド責任者

電気工事士からWeb業界に転職して10数年。現在はフリーランスとしてクライアントサイトのマーケティング支援や自社メディアの運用などをおこなっています。ネットマーケティング検定やIMA検定などIT関連の資格を8つもっています。運営者情報はこちら

働き方改革は現代社会に必要な取り組み

どうして急に国が働き方改革を始めたのか。

働き方改革をおこなう背景や、これまでの国がおこなってきた取り組みなどを解説します。

働き方改革をおこなう背景とは

日本は長いこと少子高齢化問題が取り上げられていますが、労働力の中心となる18歳~65歳の人口は年々減少しており、内閣府の試算では2060年には生産人口がピーク時の半分になるという試算が出ています。

年齢区分別将来人口推計

引用元:内閣府HP

生産人口の減少は、経済力の低下に繋がり国力に深刻な影響を及ぼす問題です。

しかし、2019年のOECDデータに基づく労働生産性ランキングで日本はOECD加盟37カ国中21位(引用元:日本生産性本部)とかなり低く、日本人の生産性に対する意識や、社会構造的な問題が浮き彫りになりました。

この問題を解決するためには、企業に任せておくのではなく国が現状の働き方の改革に積極的に取り組み、労働力の確保や生産性の向上を図っていくことが必要なのです。

厚生労働省の取り組み

厚生労働省では、長時間労働の制限や有給取得を促進させる働きかけをおこなっており、改正された労働基準法のポイントをまとめたリーフレットやパンフレットを作成して、企業に呼び掛けています。

リーフレット

しかし、この改革によって企業側は組織改革や設備投資、人件費の増大など経営に影響が出るような中小企業もあるのが実情です。

そこで労働時間を削減するための設備投資や、非正規雇用となっている労働者の待遇改善にかかった人件費などの助成金制度を実施しました。

また、よい取り組みをしている企業は表彰し、社会に広く知られるようアピールもしています。

働き方改革で変わる8つのこと

働き方改革で変わること

具体的に働き方改革で何が変わるんでしょうか。

働き方改革によって、企業や労働者にはどのような変化が起きるのか解説していきます。

長時間労働の是正

日本の長時間労働は、2013年から国連より是正勧告を受けており、国際社会からも問題視されてきました。

日本の長時間労働が当たり前となっている原因には、労働に対する過去の考え方から抜け出せない背景があります。

戦後の高度経済成長期から長く働くことが美徳とされ、働くほどに評価される時代がありました。

そのような過去の習慣・考え方がいまだに根強く残り、長時間労働が当たり前になっているのです。

働き方改革では労働時間を短縮し、効率的な働き方をするよう呼び掛けています。

賃金の引上げ

長時間労働を是正するには無駄な残業をなくし、時間内に終わらせることを目標にしなければなりません。

しかしそれによって、基本給が少なく残業手当を当てにしていた人は、残業手当が入らなくなり生活に支障をきたしてしまいます。

そうなると、生産性向上どころか労働意欲も下がってしまいますので、労働者の意欲を維持するために残業手当分の賃金の引上げが必要になってくるでしょう。

効率よく働き十分な収入が得られれば、私生活を充実させることができ従業員の満足度向上も期待できます。

多様な働き方ができる環境作り

女性は妊娠・出産のタイミングで、長期的に仕事を休む期間が発生してしまいます。

そのため、キャリアアップと子育ての、二者択一を迫られる部分がありました。

また、男性の産休・育休の取得にはまだまだ周囲の理解が広まっていないのが現状です。

こういった妊娠・出産がキャリアアップの枷とならない職場環境を推進すれば、出生率の向上も期待できます。

他にも「残業の解禁」「テレワークの導入」「一律の就業時間を取りやめる」など、柔軟な働き方が選べれば働きたい人が増え、人手不足の解消に繋がるでしょう。

ハラスメント防止対策の強化

企業内の問題として取沙汰される機会も増えているのがハラスメントに関する問題です。

セクハラ・パワハラはよく聞くと思いますが、産休や育休を取る人へのマタハラ(マタニティハラスメント)や、モラハラ(モラルハラスメント)、ジェンハラ(ジェンダーハラスメント)など、職場で起こりえるハラスメントは多岐にわたります。

こういったハラスメントは決して許される問題ではないですし、ハラスメント防止対策は男性・女性に限らず誰もが働きやすい企業となるために必要不可欠です。

それには、産休・育休取得者の穴埋めをする社員が不公平を感じない仕組み作りが重要になってきます。

労働者が安心して働ける環境が整えば、自然と企業内の生産性も向上し、よい人材が集まりやすくなるでしょう。

非正規雇用の待遇差を改善

就業形態に関わらず、同じ仕事をしている人は同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金」という考え方があります。

交通費の支給は正社員のみ、同じ仕事をしていてもパートや有期雇用など非正規雇用の労働者には賞与が支払われないといった不公平は認められません。

労働者から待遇の違いを問われた場合、企業側にはその理由を説明する義務が課せられています。

これまでは正社員と非正規雇用とでは、仕事内容が同じであっても、給与など待遇に差があるのが普通でした。

それにより引き起こされる格差を減らし、労働者の意欲を高める取り組みがなされています。

多様性(ダイバーシティ)を認める社会作り

魅力ある職場環境を作るには、多様性を認める社会が必要です。

性別や年齢、人種の違いを認め合い、共存できるようにすれば、企業にも様々な人材が集まるでしょう。

再就職支援と人材育成を推進

労働力の拡充には、定年後の再雇用や病気・ケガを理由に仕事を休んでいた人を復帰させるなど、多くの人に働く機会を与える必要があります。

企業にとって必要な能力をもった人が柔軟に職場復帰できれば、採用や社員教育にかかるコストを減らしつつ人材不足を補えます。

また社内研修を正社員のみに限定せず、非正規雇用者であっても必要な能力を持つ人材を育成することが必要です。

企業側への罰則を定める

働き方改革では、残業時間は年間720時間以内・複数月平均80時間以内・月80時間未満と定められました。

労使間での合意があっても、これを越えて働かせることはできません。

違反した場合、企業側に6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

以前は問題のある企業へ指導する程度であったことを思うと、厳しく制限しているといえるでしょう。

働き方改革の事例3選

働き方改革を積極的におこない、よい結果を出している企業の事例を紹介します。

事例1.柔軟な働き方を積極導入

子育てや介護中の社員を助ける時短勤務、会社に出勤しないテレワーク、就労時間を柔軟に決められるフレックス制度などを導入している企業は、数多く存在します。

産業医による健康管理指導などをおこなっている株式会社ドクタートラストでは、従業員が育児や介護に携わりやすくなるよう「短時間正社員制度」を導入しました。

短時間労働者員になってから、再び正社員に戻ることも可能となっており、ライフステージに合わせた柔軟な働き方ができるようになっています。

また、この制度は自己啓発やボランティアが理由でも、許可が下りれば利用可能で、社員の自発的な成長を推奨しているといえるでしょう。

オンラインによる人事業を展開する株式会社キャスターでは、テレワークを当たり前の働き方とし、既に社員の9割以上が実践しています。

この取り組みが認められ、2019年には厚生労働省主催の「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰」にて奨励賞を受賞しています。

事例2.手厚い育児休暇制度で社員を支援

洗剤や化粧品などを製造する花王株式会社では、育児休暇の取得によって無収入となってしまう世帯に対する支援制度を早くから実施しました。

男性従業員への育児休暇取得も推進し、男女とも子育てに参加しやすい企業体制を整えています。

フリマアプリで近年注目を集めるメルカリでも、産休の延長や産休・育休中の給与保証もするなど、手厚い制度で子育て世代の社員を支援しています。

事例3.削減した残業手当を社員に還元

大手不動産会社の野村不動産では、生産性を上げるための目標設定をし、残業削減に向けた具体的な取り組みを進めています。

そして削減された残業手当に代わるリターンも用意しています。

研修費用を拡充するなどし、社員のスキルアップを後押ししています。

働き方改革の課題

企業の生産性が上がって、労働者の賃金も増えれば企業・労働者ともによい結果をもたらしますが、これを実現するには、企業にのみ都合のいい解釈で働き方改革が進まないよう注意が必要です。

「有給休暇が年末年始休暇に付け替えられて休暇数が減る」「時間内に仕事が終えられない社員は大幅に賞与を減額する」といった、労働者に不利な労働条件にならないようにしたいものです。

また、違反した企業には罰則も定められていますが、すべての企業の労働実態を把握し違反を取り締まるのは不可能といえます。

そのため企業と労働者間での条件交渉として、労働組合の存在が重要になるでしょう。

双方にとって有益な労働条件が結べるよう、労働者側も企業内でおこなわれる働き方改革に意識を向ける必要があります。

働き方改革で起こるメリット・デメリット

働き方改革をもっと知るために、企業側・労働者側それぞれのメリット・デメリットを確認しておきましょう。

労働者側のメリット・デメリット

労働者側のメリット・デメリット

労働者側のメリットには、次のような点が挙げられます。

  • 労働時間短縮、休暇取得の推進で私生活を充実
  • 働き方が選べることで仕事を諦めていた人も企業に就職可能
  • 賃金の引き上げにより、収入の不安から結婚や出産を諦めていた人も前向きに決断

効率的な働き方が広まり、休暇が増えれば、仕事以外の私生活を充実させやすくなります。

家族との時間や趣味を大切にする人にとっては、働きやすい環境になるといえるでしょう。

また多様な働き方が認められれば、病気や家庭の事情で就職を諦めていた人にも活躍の機会が与えられます。

そして賃金が上がれば、結婚や出産をためらっていた人も前向きな決断がしやすくなり、出生率の向上も期待できます。

一方、メリットと同時にデメリットも考えられます。

  • 残業制限により残業手当の減少から収入低下
  • 短時間で成果を出さなければならないプレッシャー
  • 限られた勤務時間で成果を出すため、仕事の持ち帰りが非公認ルール化する恐れ

働き方改革では残業時間が制限されるため、得られる残業手当にも上限ができてしまいます。

これまで通りの残業手当がもらえず、収入が少なくなってしまう人もいるでしょう。

また短時間で効率のよい働き方を評価するとなれば、素早い結果を求められるプレッシャーにさらされます。

成果達成のために、非公式な持ち帰り仕事が常態化してしまえば、働き方改革の意味がありません。

こうした事態を避けるには、労働時間の短縮が企業側だけに都合のよい内容とならないよう、注視する必要があります。

給与や評価システムが正当か、労働者側も関心をもって確認するようにしましょう。

また効率的な働き方ができるよう、自身のスキルアップにも取り組みたいものです。

企業側のメリット・デメリット

企業側のメリット・デメリット

企業側のメリットとしては、下記の点が挙げられます。

  • 労働者の生産性が上がり、業績アップ
  • 短時間で効率のよい働き方が浸透し、残業手当などのコストを抑制
  • 魅力的な職場環境が整い、優秀な人材を確保

以上のように、よい循環を生み出せれば、その企業はさらなるレベルアップが可能です。

しかし同時に、下記のようなデメリットも考えられます。

  • 賃金の引上げによる一時的な人件費の増大
  • 生産性を上げるための設備投資負担
  • 社員の休暇取得により業務スケジュールが不確定化

これまでの働き方を変えるためには、一時的に人件費や設備投資への負担が増えます。

改革を進め、費やした費用を回収するには数年・数十年単位でかかる可能性もあるでしょう。

会社として余力の少ない、特に中小企業などはその負担によって、経営状況が悪化する恐れもあります。

働き方改革に必要な設備投資などには、助成金も用意されているので、企業側は上手く活用していきたいところです。

また有給休暇を自由にいつでもとれるようにすると、企業として労働力を集中させたい時期に人手が足りないということも起こり得ます。

業務スケジュールが立てづらくなるので、社員の休暇取得を調整する仕組みを整える必要があるでしょう。

働き方改革に賛成?反対?アンケート調査

働き方改革に関するアンケート調査を、自治体や転職情報サイトなどがおこなっています。

全体を通して見ると、企業・労働者共に働き方改革によって、プラスの効果が出ることを期待している様子がうかがえます。

しかしながら、その方法が見えない、取り組みの効果が表れていない、という現実もあるようです。

労働者側の意見

労働者も働き方改革を必要と考えている人が多く、生産性の向上や人材の活用などが必要とする理由に挙げられています。

社内でおこなわれている働き方改革の成果についても、企業側の意見と同様に効果を実感している人の数は半数程度です。

労働者個人や、一企業だけで改革できる部分はごく僅かであり、長期的に社会全体で取り組むべき問題であるとする意見もあります。

企業側の意見

働き方改革をすでにおこなっている企業では「残業手当が減った」「従業員の効率が上がった」という意見がありますが、「効果が実感できていない」とする回答が半数近い状態です。

改革しようにも人手が足りず、労働者の負担を減らせない・休暇取得率を上げられないのが現状でしょう。

また今までのやり方を変えるのが難しく、どうすれば改革できるのか、わからなくなっている企業もあるようです。

特に中小企業に、こういった傾向が多くみられます。

企業側も働き方改革の必要性を感じているものの、現時点ではなかなか結果が出ていないようです。

さいごに

働き方改革は企業にも労働者にも、重要なテーマです。

そのため、企業・労働者ともにメリットある働き方改革が重要だといえます。

企業側だけに都合のいい改革がされないよう、労働者である自分たちの問題として、関心を持つ姿勢が大切です。

今より労働時間が減って賃金が増え、働きやすい環境が整えば、社会全体のメリットとなります。

働き方改革について正しく知り、労働者側にとって必要な権利が求められるようにしましょう。