フリーランスになったら失業保険をもらえる?受給条件と開業届を出すタイミング

更新日:/公開日:2022年12月08日

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フリーランスになったら失業保険をもらえる?

この記事の企画・編集者
溝口ひろき
つなぐマーケティング代表

フリーランスとして一歩踏み出すとき、どうしても準備に時間がかかってしまったり、会社を辞めて収入が減ったりして、金銭的に苦しい状況に陥るのは仕方がありません。

そこで気になるのが、会社を辞めたのだから「失業保険」がもらえるのではないか?という点です。

また、会社員として働きながらフリーランスとしての副収入があった場合も、十分な収入とはいえなければしばらくの間は失業保険でカバーしたいと考えることもあるでしょう。

フリーランスとして独立したばかりだと、仕事を失ってしまったときに失業保険を受給できるのかも気がかりになるはずです。

フリーランスと失業保険の関係について解説します。

この記事の監修者

溝口 ひろき

溝口 ひろき

フリーランスガイド責任者

1983年生まれ。電気工事士からWeb業界に転職して15年以上。現在はフリーランスでWebマーケターをしており、クライアントサイトのマーケティング代行や自社メディアの運用等をおこなっています。
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会社を辞めてフリーランスとして活動する場合、失業保険はもらえる?

会社員として働きながらすでにフリーランスとしても活動しており、ある程度の収入を確保している方もいるでしょう。

こういった方でも、失業保険は受給できるのでしょうか?

失業者がもらえる雇用保険の基本手当(失業手当)と再就職手当

まずは失業保険の基本的な考え方を確認していきます。

すでに失業保険という用語は一般的にも広く通用しますが、実際には失業保険という保険制度は存在しません。

正確には雇用保険の制度によって給付されるもので「基本手当(失業手当)」と「再就職手当」のふたつに分かれますが、主に基本手当(失業手当)のことを失業保険と呼ぶのが一般的です。

失業手当とは

基本手当、いわゆる失業手当は、就職する積極的な意思や能力があるのに失業状態であり、離職の日から2年以内に雇用保険の被保険者である期間が12か月以上である人を対象とした手当です。

離職日の直前6か月間の月給の合計額を180で割った賃金日額を基準にして、年齢に応じた上限額の範囲内で賃金日額のおよそ45~80%が給付されます。

失業手当は、離職の理由によって扱いが異なるので注意が必要です。

フリーランスへの転向であればほとんどのケースが自己都合による退職であり、離職の日から7日間は待機期間、さらに2~3か月の給付制限期間が設けられているので、給付開始は早くても離職から3か月あとになります。

給付期間は雇用保険をかけていた期間によって異なり、10年未満で90日間、10年以上20年未満で120日間、20年以上で150日間です。

失業手当の対象となる条件をまとめておきます。

【対象者】

  • 失業状態にある方
  • 離職前2年間に被保険者期間が12か月以上あること
  • 積極的に就職しようとする意思があること
  • いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があること
  • 積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業に就いていないこと

【対象外の方】

  • 妊娠、出産、育児や病気
  • ケガですぐに就職できない
  • 就職するつもりがない
  • 家事に専念、学業に専念
  • 会社などの役員に就任している
  • 自営業の方など。

参照元:Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~|厚生労働省

再就職手当とは

失業手当の給付対象者でも、早い段階で再就職が決まるケースは珍しくありません。

フリーランスとして独立する予定で会社を辞めたのなら、なおさらです。

しかし、なかには「失業手当がもらえる間は就職せずにゆっくりしよう」と考える人もでてきます。

そこで、早期に再就職しても「もらえるはずの失業手当がもらえず損をした」といった事態が起きないように用意されているのが再就職手当です。

条件を満たしている場合は、早期に再就職しても失業手当が給付される残り日数分の60~70%が再就職手当として給付されます。

再就職手当の対象となる条件は次のとおりです。

支給の要件について

引用元:再就職手当のご案内|厚生労働省・都道府県労働局 ・公共職業安定所(ハローワーク)・地方運輸局

失業手当はもらえないが、再就職手当はもらえる権利がある

会社を辞めてフリーランスに転向した場合はフリーランスとしての職があり、失業状態という要件に合致しないため失業手当の対象外となります。

ただし、雇用保険をかけていた事実があれば再就職手当の受給は可能です。

フリーランスの人が再就職手当を受給できるのは、会社都合での退職なら7日間の待機期間を経たあと、自己都合による退職ならさらに給付制限の最初の1か月が過ぎてから開業届を提出した場合に限られます。

退職してすぐに開業すると再就職手当は受給できません。

離職前に開業届を出した場合はどちらももらえない

会社に在籍している間に副業の開業届を提出済みの場合は、会社を退職しても失業しているとはいえません。

当然、失業手当の対象にはならないのが原則ですが、かといって、副業では十分な収入を得られていなければ手当に期待しないと生計を立てるのは難しいケースも多いでしょう。

このようなケースについて、ハローワークは「どちらともいえない」という姿勢を示しています。

原則として対象外ですが、1日につき4時間以上、1週間につき20時間以上、その業務に従事していなければ「就業」とはいえないという解釈なので、副業の収入が低ければ失業手当は受給できるかもしれません。

フリーランスが失業手当の不正受給に該当するケースと罰則

厚生労働省は、失業手当の不正受給がないかを厳しく監視しています。

ここで挙げるようなケースは、自分ではそんなつもりがなくても不正受給にあたる可能性が高いので注意しましょう。

会社員時代からの副業で収入を得ていた

会社員のころから副業としてある程度の基盤を築き上げており、退職後もその収入を得ている場合は、原則として失業手当を受給できません。

この点は、開業届を提出していなくても同じです。

副業の収入を得ている事実を隠したままで失業状態を装って失業手当を受給すると不正受給になります。

再就職するつもりがないのに面接を受けていた

失業手当を受給するには「就職したい」という意思を示すために求職活動を続ける必要がありますが、そもそも就職するつもりがないのに面接を受けていても誠実な求職活動とはいえません。

求職活動をしているように装い「条件が合わない」「雰囲気が悪い」などの理由をつけて失業状態を続けながら失業手当を受給する行為も不正受給です。

虚偽の申告をした・申告すべきことをしなかった

ハローワークに虚偽を申告したり、申告が必要な事項を申告しなかったりしても不正受給になります。

たとえば、失業保険の基礎となる賃金日額をごまかすために離職前の収入額を偽装したり、わずかでも副業による収入があるのに申告しなかったりといった行為があると不正受給です。

不正受給した場合の罰則

不正受給をはたらいた場合は、不正行為があった日以降のすべての給付が得られない「支給停止」を受けるだけでなく、すでに不正に受給した手当の全額をただちに返還しなければなりません。

しかも、不正に受給した金額の最大2倍の納付も命じられるので、返還とあわせると受給額の3倍を徴収されます。

不正受給は「3倍返し」です。

期日を過ぎると延滞金が加算されるうえに、返還・納付に応じないと財産の差押えも受けるので「返せない」「お金がない」といった言い訳は通用しません。

フリーランスが失業保険を不正受給したらこうやってバレる

失業保険の不正受給はほぼ確実にバレます。

厚生労働省は常に失業保険の申請・給付状況を監視しているので、不正受給を見逃すことはありません。

フリーランスの収入はクライアントから支払われる報酬です。

フリーランスを相手に報酬を支払ったクライアント側は、支払調書や源泉徴収票といった資料が税務署へと提出しますが、これらの資料にはマイナンバーの記載が求められているので、いつ、誰に、いくらの報酬を支払ったのかは筒抜けになります。

税務関係のデータとの照合から不正受給が疑われると、クライアント企業への調査や受給者の家庭訪問などがおこなわれるので、不正受給の発覚は避けられません。

また、一般の人からの投書・密告・通報から発覚するケースも少なくないようです。

フリーランスが再就職手当を受け取る流れと期間

フリーランスへの転向にはお金の悩みがつきものです。

再就職手当を受給できるとしても「どんな流れで、いつ頃支払われるのか?」が気になる方も多いでしょう。

フリーランスが再就職手当を受け取れるまでの流れと期間を確認していきます。

ハローワークで申請手続きをする|離職から数日

まずは住居地から最寄りのハローワークで申請手続きをします。

会社を退職すると数日程度で離職票が郵送されるので、手続きできるのは離職票を受け取ってからです。

ハローワークで申請手続きをする際は、次のものを持参しましょう。

  • 離職票
  • 個人番号確認書類(マイナンバーカード・マイナンバー通知カード・住民票など)
  • 身分証明書類(運転免許証・国民健康保険証など)
  • 印鑑
  • 預金通帳
  • 証明写真(3㎝×2.5㎝)2枚

すでにフリーランスとして独立する意向でも、求職の申し込みは必須です。

求職申込後にフリーランスとしての開業を報告しても問題ないので、まずはハローワークの窓口で求職を申し込みましょう。

待期期間と給付制限期間が過ぎるのを待つ|申請から7日+1か月

ハローワークで申請手続きをした日から7日間は待機期間です。

待機期間は就業できず、もし就業した場合はその期間が延長されてしまいます。

退職して時間に余裕ができるので「このタイミングで開業届を」と考える方も少なくないようですが、ここで開業届を提出すると再就職手当を受給できなくなるので要注意です。

待機期間が終わると、続いて給付制限期間が始まります。

給付制限期間の1か月を経過したあとで開業しないと再就職手当を受給できないので、この点も注意が必要です。

雇用保険説明会に参加後、失業認定を受ける|申請から約4週間後

待機期間・給付制限期間の間に、ハローワークが実施する雇用保険説明会への参加が必要です。

雇用保険説明会では、失業保険の仕組み、申請から受給までの流れなどの詳しい説明があるので、ハローワーク側が指定した期日にかならず出席しましょう。

そのほかにも、この期間には求職活動や職業講習会への参加が必要です。

これらをクリアすれば、ハローワークへの申請から約4週間後の期日で「失業認定」を受けます。

開業届を提出し開業する|申請から7日+1か月が過ぎたあと

待機期間の7日間と給付制限期間の1か月が過ぎたら、税務署に開業届を提出します。

開業届は、正しくは「個人事業の開業・廃業等届出書」という名称で、国税庁のサイトからダウンロード可能です。

届出書にはマイナンバーを記載する欄があり、なりすまし防止のため本人確認書類の提示か、またはその写しの提出もあわせて求められます。

税務署で開業届を提出・受理してもらったら、日付が入った受領印が押されるので、かならずその控えをもらって保管しましょう。

再就職手当の申請をする|開業届を提出したあと

開業届を提出した段階で失業状態ではなくなります。

もし失業手当を受給していた場合でも、ここからは受給が停止しますが、代わりに残りの受給日数に応じた再就職手当の受給が可能です。

再就職手当の申請には、次の書類を用意しましょう。

  • 開業届の写し
  • 再就職手当支給申請書
  • 個人番号確認書類
  • 身分証明書類
  • 印鑑
  • 仕事をしていることがわかる書類(業務委託契約書など)

必要な書類はハローワークでの初回申請時とほとんど同じですが、開業の事実とフリーランスとしての業務実態を示す資料が必要になるという点で、必要書類が増えている点には要注意です。

再就職手当の審査と決定|申請からおよそ1か月

申請に必要な書類がそろっていれば、ハローワークの窓口で問題なく受理されます。

ここからハローワーク側の審査が始まりますが、ハローワークの混雑状況によって審査にかかる日数はまちまちです。

早ければ2週間程度で審査が終わることもありますが、フリーランスの場合はおよそ1か月を目安に考えておきましょう。

審査に通過すると支給決定通知が送付されます。

また、審査に通らなかった場合でも不支給決定が通知されるので、申請から2~4週間を目安に通知が届かなかった場合はハローワークに審査状況を問い合わせてみましょう。

事業が継続されているかの確認|審査期間のなかで実施

再就職手当の審査内容には「実際に再就職しているのか?」の確認が含まれています。

会社員として再就職した場合は在籍確認がおこなわれることがありますが、フリーランスの場合は申請のとおり事業を継続しているのかがポイントになるので、電話による確認がおこなわれるだけで終わるのが一般的です。

事業継続の電話確認は、再就職手当申請からおよそ1か月後におこなわれます。

再就職手当の支給|支給決定から1週間程度

申請書類に不備がなく、フリーランスとしての事業継続が確認できたら、審査終了です。

審査に通過して支給決定通知が送付された日からおよそ1週間で、指定した口座に再就職手当が振り込まれます。

ハローワーク側は「支給決定から5営業日」を目安としていますが、ハローワークの閉庁日や金融機関の休業日が絡むと数日遅れることがあるので、支給決定の通知を受理して1週間程度で振り込まれると考えておきましょう。

フリーランス向けのお金に関する保険や補償制度

会社員からフリーランスへと転向する際は失業保険によるカバーが期待できますが、フリーランスが廃業したり、病気やケガで休業したりといったときには公的補償制度ではカバーできません。

フリーランスの人が身を守るためにおすすめの保険・補償制度を紹介します。

小規模企業共済はフリーランスの退職金制度

フリーランスをはじめ、小規模企業の経営者や役員に向けて廃業や退職時の生活資金などを積み立てるのが、中小機構の「小規模企業共済」です。

積み立てた共済金は退職・廃業時に受け取り可能なので、会社から退職金が支払われるわけではないフリーランスにとって退職金の代わりとなります。

月々の掛け金は1,000~70,000円の範囲で自由に設定できるうえに、加入後の増減も可能です。

しかも、掛け金は全額が控除対象になるので、高い節税効果が期待できます。

ケガや病気の際に受け取れる所得補償保険

大きな企業では共済制度が用意されていたり、一般の保険会社でも団体割引を受けられたりとさまざまな面で優遇されていますが、フリーランスでもここで紹介する制度を活用すれば会社員と同クラスの補償を得られます。

フリーランス協会のベネフィットプラン(おすすめ)

フリーランスとしての悩みのひとつが「福利厚生」がないことですが、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会に加入すれば、福利厚生サービスが受けられます。

年会費1万円で加入できるベネフィットプランでは、情報漏えいや著作権侵害といったフリーランス特有のトラブルに備えた賠償責任補償、健康診断の割引などが受けられる福利厚生サービスの利用が可能です。

所得補償などの保険加入も団体割引が受けられるので、万が一の補償と保険料の節約が同時に叶います。

保険会社の所得補償保険

病気やケガで働けない期間が生じたときの所得補償だけ欲しい方は、各保険会社の所得補償保険への加入を検討するのもよいでしょう。

各社とも補償内容や保険料に若干の差があるので、複数の保険会社を比較・検討することをおすすめします。

比較項目AIG損保損保ジャパン三井住友海上東京海上日動
保険金(月額)10万円10万円10万円約9万円
(日額3,000円)
月払保険料1,350円1,411円1,290円1,310円
年払保険料14,690円16,080円14,690円14,930円

※条件:年齢35~39歳、受取保険金額(月額)10万円

最後に

会社員からフリーランスの転向する場合は、仕事を失うわけではないので原則として失業保険のうち失業手当は受けられませんが、一定の期間をおいてから開業すれば再就職手当の受給は可能です。

ただし、会社員のころからすでに副業としてある程度の収入を得ていた場合は、会社を辞めても「失業した」とはいえない状態だと評価されることもあるので、不正受給にならないように気を付けましょう。